第十九席 名馬は買うな!安い馬を買え?「名軍師・竹中半兵衛の買い物心得」
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戦国武将にとって、名馬を所有しているというのは一種のステータスでした。 山内一豊が妻・千代の持参金10両で名馬を買い、それが信長の目に止まって出世の糸口になった話は有名ですね。名馬を持っているかいないかは、今で言うと高級外車を持っているかいないかみたいな感覚だったんでしょう。
しかし武将なら誰もが憧れ所有したいと思う名馬を、真っ向から「そんなもの買わなくていい」と言い切った人がいました。 それが黒田官兵衛とともに秀吉を支え、「天才軍師」「今孔明」とまで称された竹中半兵衛重治です。
何故ならば、半兵衛はあるとき人に語ってこう言ったのです。
「武士たるもの、分に過ぎた馬を買うものではない。 高い金を出して買った馬で出陣したとき、敵に出会い、馬から飛び降りて仕留めようとするだろうが、側に馬添え役がいなければ馬が気になって存分に槍合わせをすることができなくなるだろう。 名馬を持っているがゆえに、せっかくの功名の機会を逃してしまい、そのために返って名を落としてしまうこともあるのだ。」
確かに盗難防止のロック機能がついている現代でも、車泥棒や自転車泥棒は後を絶ちません。 それが戦国時代で、しかも対象物が生き物である馬だったら、なおさら馬添え役がいないと誰かに盗まれる以前に馬自身が勝手にどこかへ行ってしまう可能性だってあるのです。
- 盗難保険に入ってるわけでもなし、誰だって高いお金を出して買った名馬は手放したくありません。馬が気になって戦いに集中できないというのは充分に有り得る話です。
しかしだからと言ってお金を惜しんで馬を買わなければ、いざというときに働くことができません。
一体どうすればいいのでしょう?
その問いに対し、半兵衛の答えはこうでした。
「10両の金を持っていて馬を買いたいときは、5両の馬を買うようにすることだ。 そうすれば馬がどうなろうと気にすることはなく敵と勝負をすることができるし、場合によっては乗り捨てても構わない。残った5両でもう一度馬を買えばいいのだから。」
高いお金を出した馬を気にして満足に戦えないよりも、安い馬を乗り捨てるくらいの気持ちでいたほうが功名を立て、名を上げる機会も増えるだろうと半兵衛は言いたかったのです。 聞きようによっては高いお金を出して名馬を買ったことで有名な山内一豊を批判してるように聞こえなくもないですけど、一豊の場合は、そのおかげで信長の目に止まったという、戦場で活躍するよりも政治的意図としての名馬購入だったので、半兵衛が正しい、一豊が間違っているとは一概には言えません。
しかしこの半兵衛の言葉通り、一時は半兵衛に預けられていた黒田官兵衛の嫡男・松寿丸ことのちの黒田長政は、城井谷合戦で敗走したときに名馬・大龍寺を失うことを惜しんで逃げ遅れ、それを後藤又兵衛に批判されたという話も残っています。 あまりにも素晴らしすぎる馬を持っているために、危うく馬よりも大事な命を落とすかもしれなかったんですね。
話の最後に、半兵衛はこうも言いました。
「この心がけは馬に限らず、すべてのものごとに当てはまるものだ。 武士というものは義のために身を捨てることがあるではないか。 まして財産、宝などは塵芥のように捨て去る心得こそ必要である。」
無欲の軍師と言われた竹中半兵衛重治の人となりが、よく伝わってくる言葉ですね。
文:ひなた


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